第4回:タッチは心を温かく包むパワーがある ― 臨床アロマセラピスト NAOKO のアロマ道

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第4回:タッチは心を温かく包むパワーがある

こんにちは。みなさまお疲れ様です。臨床アロマセラピストのNAOKOです。
今日は「触れる」ことについて、お話したいと思います。

タッチの力

みなさまがお仕事をされていて嬉しいなと思ったのはどんなことでしたか?
患者さんが回復されていくとき、思いがけず「ありがとう」と言われたとき・・みなさまそれぞれに忘れられない瞬間があると思います。

私にもこんな患者さんとの思い出があります。

看護師になって2,3年目の頃だったでしょうか。白髪で上品な顔立ちの高齢の女性が緊急入院してきました。大腿骨頸部骨折で直達牽引され、見るからに痛そうなのですが、慣れない環境に興奮気味で安静が保てません。ご家族によると認知症もあるとのことでした。目が離せないため、一晩処置室で過ごし、朝の活気で少し落ち着いたようなので大部屋に戻りました。

大部屋に訪室し、顔を近づけて話しかけた私に、患者さんは不意に白い腕を伸ばして両手で私の顔を包みこみました。

「まああ、なんてかわいいの!ちょっと見て!奥さん!この子見て!」

一瞬何が起こったのか解らず、頭が真っ白でした。すぐに気恥ずかしくなり、隣の患者さんがほんとに見たらどうしようかなと思っていると、もう次の瞬間には私が「隣の奥さん」になっていて、「ちょっと奥さん、聞いて」とまったく別のお話が始まりました。少しほっとして、なんだかおかしくて、でも嬉しくて・・。そう、とても嬉しくてあったかい気持ちになったのです。

まさか患者さんに自分の顔を優しく包まれるなんて、思ってもいませんでした。誰かにそんな風に触れられた経験は子どもの頃にはあったのでしょうが、大人になってからは記憶にありません。思いがけない患者さんの優しいタッチは、勤務中の張りつめていた私の気持ちを一瞬にしてほぐしてくれたのです。

「いくつになろうと、私たちにはタッチが必要です。怯えていたり、落ち込んでいたり、寂しかったり、疲れている時は特にそうです。愛情深いタッチほど、慰め、安全、優しさ、癒しを与えてくれるものはありません。」1)これは真実だと思います。

痛みのゲート・コントロール説

タッチの効果として、多くの人が日常で経験しているのが『痛いの痛いの飛んで行け~!』ではないでしょうか。これが理にかなっているという説がメルザックとウォールが提唱した「痛みのゲート・コントロール説」です。メルザックらによると「痛みの信号は末梢神経から脊髄後角をとおって脊髄に入り、脳へ伝わっていく。この脊髄後角に、痛みの信号の流入をコントロールするゲート(門)がある。たとえば、ケガをしたり何かにぶつけたりしたとき、思わず、その部位に手を当てて撫でたりさすったりする。これはゲート・コントロール理論にかなったやり方である。ケガをした部位を撫でたりさすったりして触覚刺激を与えることでゲートを閉め、痛みの感覚をブロックしている。」2)というのです。

現在までこの説の信頼性は確定していませんが、痛覚神経より触覚や圧覚神経の方が太く、同時に起こるとタッチの感覚が優位になり痛みが和らぐということは言われているので、タッチで痛みを緩和することは可能だと思われます。

緩和ケア病棟で

腎臓がんで骨転移がある50代男性は、腰にかなり強い痛みがあり、アロマセラピーを希望されました。私が伺う1か月前に、はじめてアロマセラピーを受け、とても楽になったのでその後も楽しみに待っていてくださいました。

私が伺ったときには、痛みはだいぶコントロールできている様子で、歩行器を使ってご自分でトイレにも歩いておられました。

香りは、初回に使ったラベンダーとネロリがとても気に入っているようでしたので、今回も同じものを選択し、気持ちのいい時間を思い出してもらおうと考えました。

アロママッサージを開始すると、触れてすぐに「あー気持ちいい。あーやっぱり気持ちいい。」と感覚を思い出すように話されるので、初回のアロママッサージが患者さんにとって気持ちのよい時間になったのだと嬉しく思いました。

そんな時「こんな風に死ねたらいいなあ・・」と声が聞こえました。

私は思わず「大丈夫です。もし最期があるとすれば、その時は必ずこんな風に気持ちいい感覚になるんです。それは神様がみんなにくれるプレゼント。私はそう信じています。」と答えました。すると「ありがとう」とにっこり笑って言ってくださいました。

終了後、片付けをしていると「昨日、CT検査でがんが大きくなってるって言われたんだ。でもそんなこと吹き飛ぶくらい、アロマは気持ちよかったよ。」と。

あの答えが良かったのかどうか、未だにわかりませんが、患者さんが強く持っている死への不安をすこしでも和らげられたのならいいなと思います。

さすること、なでること、気持ちのいい感覚は人の本能として、息を引きとる瞬間まであると思います。もう意識がないように見える患者さんでも、ありがとうという言葉や優しい声、そして温かいタッチは必ず患者さんを心地良い感覚にし、死にゆく援助になると思っています。

時に家族にも触れることの大切さをお伝えします。「大切な人に何かしたい。」そう願うご家族にとって、タッチは愛する人への言葉を超えた愛情表現になると思うからです。

精油の紹介 ~ネロリ

■主な効能
ネロリは抗不安作用があり、ショック、気分の浮き沈み、不眠、精神疲労によい精油です。また、腸蠕動運動促進作用、肌を柔らかくすることでも有名です。

■エピソード
古典的なオーデコロンには、ネロリ、ラベンダーやベルガモット、レモン、ローズマリーが調合されています。

■植物の特徴
ネロリはビターオレンジの花から採れる精油です。ビターオレンジの葉と枝からはプチグレン、果皮からはビターオレンジの精油が採れます。

次回は看護師のみなさま自身も癒されてほしいのでセルフケアについてお話ししたいと思います。

■参考文献
1)Phyllis K.Davis著 三砂ちづる訳:パワー・オブ・タッチ、メディカ出版、2003
2)山口 創:皮膚感覚の不思議、講談社、2006

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■著者プロフィール

NAOKO

NAOKO
短大卒業後、一般企業に就職し5年間事務職に従事する。1994年、専門職になりたいと大阪の看護専門学校に入学。1997年より大阪の総合病院にて内科病棟と外科病棟に勤務。2011年病院を退職。2011年ホリスティックケアプロフェッショナルスクールプロフェッショナルコース入学。2012年HPS認定アロマセラピスト取得。2013年より医療施設と連携したケアルーム「Lifetouch」にて勤務。HPS臨床アロマセラピストコースに進学し、猛勉強中

■監修

相原由花

相原 由花
ホリスティックケアプロフェッショナルスクール学院長、英国ITEC認定アロマセラピスト、英国リフレクソロジー協会認定リフレクソロジスト、関西医科大学心療内科学講座研究員、日本アロマセラピー学会評議員、日本ホリスティックナーシング研究会役員、eBIM(エビデンスに基づく統合医療研究会)評議員、NPO法人ウーマンリビングサポート副理事、The American Holistic Nursing Association会員、看護師、保健師

臨床アロマセラピーにご興味をお持ちになられた方は、お気軽に下記までお問い合わせください。

●ホリスティックケアプロフェッショナルスクール神戸本校
〒651-0085 神戸市中央区八幡通4-2-13 フラワーロード青山ビル5F
◎お電話でのお問い合わせ ⇒ 078-272-3093
◎ホームページで、詳しい情報をご紹介しています。
http://www.hcpro.jp/
◎Facebookページもあります。ぜひご覧ください。
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セミナー情報など

■HPS認定 プロアロマセラピスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#ca
アロマセラピストの基礎を、1年間徹底的に学びます。現役医師をはじめ、臨床経験豊富な講師から、基礎医学・精油学・アロママッサージをしっかり学習。シフト調整がしやすい「月2回」の受講です。

■HPS認定 臨床アロマセラピスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#cb
病いを抱えた患者さまの、症状緩和・QOL向上・安寧確保のためのアロマケアを学びます。病棟・施設でアロマを実践したい看護師の方におすすめです。

■HPS認定 リフレクソロジスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#cc
足裏から、患者さまの身体状況をアセスメントする技術です。反射区を刺激することで不調を改善しながら、心地よいリラクセーション効果もあり、脱衣がしづらい患者さまにも適用しやすいことも利点です。

■RJB認定 MテクニックRPractitioner 実践者育成コース
http://hcpro.jp/course.html#cd
どのような重篤な患者さまにも適用できる、特殊なタッチング技術です。精油を用いず、衣服の上からも行えるため、実施の場所を選びません。疼痛・不安・睡眠障害などをやわらげます。

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