第3回:香りの力 ― 臨床アロマセラピスト NAOKO のアロマ道

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第3回:香りの力

こんにちは。臨床アロマセラピストのNAOKOです。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。

香りと記憶

金木犀の香りが漂うと、香りを嗅いだときの出来事が蘇ったり、あるいはその時一緒にいた人を思い出す。そのような経験をお持ちの方は多いと思います。人によっては、思い出に結びつく香りは沈丁花だったり、木蓮だったり、雨上がりのにおいかもしれません。

患者さんにもオレンジの香りで故郷を思い出す方、ベチバーで懐かしいと目を閉じる方などがおられ、人それぞれに思い出と結びついた香りが違うことがわかります。このように香りで思い出がよみがえる現象を「プルースト効果」と呼びます。

ちなみに私は枯れ草を燃やすにおいに子どもの頃のことを思い出し、懐かしさを感じます。みなさんは思い出の香り、懐かしくなる香りはありませんか?

香りと記憶が結びつくのはなぜ?

そのわけは、香りの伝達経路にあります。

「チョコレートクッキーのにおいはそれをよく焼いていたおばあちゃんを思い出させるし、特別なパイプタバコのにおいはお父さんを思い出させる。病院には独特のにおいがあり、学校にも、お母さんにも、赤ん坊にも、旅行にも、その他いろいろなものや思い出に、それにまつわるにおいの印象がある。においに伴う印象は、中立的であることが少なく、よいか、わるいかの、どちらかであることが多い。」*1
と言われます。

嗅覚の神経路は、感情や自律神経系を司る脳の辺縁系と密接に関連しており、特に辺縁系にある扁桃核で香りの好き嫌いが決まります。そのあと海馬で一時記憶され、その後大脳で長く記憶に残されるのです。

香りは脳に直接働きかける

においの分子は鼻腔から嗅上皮にある繊毛で電気信号に変換され、嗅細胞でにおいの分析をします。そのあと上に伸びて頭蓋骨を貫いて走る神経線維を伝わり、左右の嗅球へ達します。左右の嗅球は嗅神経(第Ⅰ脳神経)であり、そこから大脳辺縁系である快・不快を司る扁桃体や記憶と関係している海馬、視床下部などに伝わって、匂いの感覚が嗅覚野で生じて匂いを識別します。

また「いいにおい!」と感じる時、大脳辺縁系ではその香りを「快いもの」と感じており、こうした快情動はいわゆる脳内ホルモンと言われているセロトニン、βエンドルフィン、アセチルコリンなどの神経伝達物質を誘発することで、疼痛が和らいだり、気分が高揚したり、体がリラックスすることができます。

私は仕事が忙しくて、なんだか余裕がなくなってきたなと思う時は、ペパーミントやユーカリのようなスーッとする香りを嗅ぎながら深呼吸して気分を変えたりします。香りのすごいところは、そのにおいを嗅いだだけで、すぐに気分を変えることができるというところでしょう。そして、それは気分と同時に体の機能も調整していることになるのですから、恐るべし香り(笑)

でも患者さんおひとりごと、好きな香りが違い、また時間経過や場面によって変化していきますので、現場ではそのことを念頭に毎回香り選びをしています。

気持ちが落ち着く

数か月前、40代の男性が心療内科のケアルームに来られました。落ち込みがちでやる気が起こらない、だるくてすぐに疲れてしまうと言います。思いつめたような表情で、質問にぽつぽつと短い言葉で返事をするといった具合でした。

アロマセラピーは上司に勧められて来たそうです。初めての体験で緊張が見られたので、まずはアロママッサージで力を抜いていただこうと思い、お話しは短めに切り上げ、香り選びに移りました。不安な心を落ち着かせるような香りにしたいと考え、サンダルウッド、パチュリ、オレンジ、ユーカリラディアタを選び、鼻の近くに持っていくと、慎重に香りを嗅いで「うん、うん、いいです。気持ちが落ち着きますね。と気に入った様子でしたので、ホホバオイルにブレンドをして全身アロママッサージを行いました。

終了後、「いいにおいでした。」と私の目を見て言ってくださり、その時の目線に力を感じました。硬かった表情は緩んでいます。

緊張が強い方でも、身体がほぐれることで、気持ちもほぐれることがあるように思います。その方も」、すこしずつアロママッサージを受けることにも慣れ、アロママッサージ中に眠ったり、椅子に座る姿勢も自然にリラックスできるようになってきました。

いつもの香り

その後も定期的に通ってくださっていますが、香りの希望を聞くと決まって「いつもの感じで」とおっしゃいます。こういう場合は『この香りを嗅いだら落ち着く』というパターンができているのかもしれませんので、変えたいという希望がない限り、同じ香りをブレンドします。

この患者さん、今では復職され、体調もよくなり、「最近は、自分が病気(うつ)だってあまり意識しなくなった」とおっしゃっていました。

症状を気にしなくなるのは回復の兆候の一つ。ケアルームを卒業するのも近いかもしれませんね。

精油の紹介 ~サンダルウッド

■主な効能
深く休みたい時に良い。 鎮静、抗炎症、抗菌などの作用があります。

■エピソード
アリを寄せ付けないため、木材は家具や寺院の建材、神々の彫刻としても刻まれ、また香として仏教やヒンズー教の寺院で焚かれていました。

■植物の特徴
ビャクダン科の植物。樹高10メートルくらいで細い木、直径7㎝になるのに30~60年かかります。

次回はタッチの効果についてお話ししたいと思います。

■引用文献
*1 エレインNマリーブ:人体の構造と機能 第3版、医学書院、2010

■参考文献
1)日本アロマセラピー学会:アロマセラピー標準テキスト臨床編、丸善、2010
2)ガブリエル・モージェイ:スピリットとアロマセラピー、フレグランスジャーナル社、2011

記事一覧

■著者プロフィール

NAOKO

NAOKO
短大卒業後、一般企業に就職し5年間事務職に従事する。1994年、専門職になりたいと大阪の看護専門学校に入学。1997年より大阪の総合病院にて内科病棟と外科病棟に勤務。2011年病院を退職。2011年ホリスティックケアプロフェッショナルスクールプロフェッショナルコース入学。2012年HPS認定アロマセラピスト取得。2013年より医療施設と連携したケアルーム「Lifetouch」にて勤務。HPS臨床アロマセラピストコースに進学し、猛勉強中

■監修

相原由花

相原 由花
ホリスティックケアプロフェッショナルスクール学院長、英国ITEC認定アロマセラピスト、英国リフレクソロジー協会認定リフレクソロジスト、関西医科大学心療内科学講座研究員、日本アロマセラピー学会評議員、日本ホリスティックナーシング研究会役員、eBIM(エビデンスに基づく統合医療研究会)評議員、NPO法人ウーマンリビングサポート副理事、The American Holistic Nursing Association会員、看護師、保健師

臨床アロマセラピーにご興味をお持ちになられた方は、お気軽に下記までお問い合わせください。

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〒651-0085 神戸市中央区八幡通4-2-13 フラワーロード青山ビル5F
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セミナー情報など

■HPS認定 プロアロマセラピスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#ca
アロマセラピストの基礎を、1年間徹底的に学びます。現役医師をはじめ、臨床経験豊富な講師から、基礎医学・精油学・アロママッサージをしっかり学習。シフト調整がしやすい「月2回」の受講です。

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■HPS認定 リフレクソロジスト養成コース
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足裏から、患者さまの身体状況をアセスメントする技術です。反射区を刺激することで不調を改善しながら、心地よいリラクセーション効果もあり、脱衣がしづらい患者さまにも適用しやすいことも利点です。

■RJB認定 MテクニックRPractitioner 実践者育成コース
http://hcpro.jp/course.html#cd
どのような重篤な患者さまにも適用できる、特殊なタッチング技術です。精油を用いず、衣服の上からも行えるため、実施の場所を選びません。疼痛・不安・睡眠障害などをやわらげます。

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