第2回:いにしえの知恵が私たちを救う ― 臨床アロマセラピスト NAOKO のアロマ道

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第2回:いにしえの知恵が私たちを救う

こんにちは。臨床アロマセラピストのNAOKOです。今回はアロマセラピーの歴史に少し触れ、患者さんへのケアの様子についてお話ししたいと思います。

アロマセラピーの歴史

古代から人々は、香りを嗅ぐと落ち着いたり、あるいは高まったりといった気持ちが変化することや植物が持つ薬効に気づいて、生活の中で活用していました。

歴史上、香料として登場するのは紀元前3000年メソポタミア時代です。人々は宗教的な儀式や祭礼に「香木」を焚いていました。木を燃やした時の香りに気分が落ち着き、瞑想状態を作っていたと思われます。

紀元前1500年エジプト時代では、植物の芳香成分の薬理作用を理解し、活用しています。その例がミイラです。1922年に発掘された「ツタンカーメン」は麻布に巻かれていましたが、その麻布から「ミルラ」などいくつかの香りがついていたことが知られています。香りを防腐剤として使用していたのです。「ミイラ」は「ミルラ」という精油の名前に由来しているんですよ。また同じころ、油に植物を浸して香りを移して「香油」を作り、お風呂上りに体に塗って血液循環をよくしたり、香りを楽しんだりしていたようです。

紀元前300年頃、哲学者であり、医学の父と呼ばれるヒポクラテスは、植物を入浴、湿布などで使用し、マッサージも主な治療方法としておこなっていました。

ん? 医学の始まりはアロマセラピー?

植物が持つ力は、当時から医療として使用されていたようです。中世では、魔除けにハーブを家の前に置いたり、感染予防のために病院の庭で焚いたりしていました。植物の持つ力を病気が治る魔力と考えていたのかもしれません。

「治癒はケアにあり」と言ったフローレンス・ナイチンゲールが、傷ついた兵士の眉にラベンダーを塗布し、優しく歌いながら身体をさすってまわったという話からも、アロマセラピーは、古(いにしえ)からの経験と知恵であり、植物の力を利用したケア法なのだとわかります。

アロマセラピストとして働く

患者さんが少しでも楽な状態になるように、心・体・魂、その全体をみて、精油の力を使って患者さんの治癒力を引き出すのがアロマセラピストだと思います。

私は今、アロマセラピストとしてケアルームや病院で多くの患者さんに精油を使ったアロママッサージを提供しています。その方の好みに合う香りで、薬理作用も考えながら精油を選び、その日の体調に合わせて、全身もしくは部分的な施術を行います。

病棟には「足がだるい」と訴える方が多くみられます。そういう時に足をアロママッサージしていると、施術が始まってすぐ患者さんは足のだるさから解放され、ウトウトし始め、そのうち寝息が聞こえてきます。自分の手の中で、無防備に力を抜いて体を預けてくれている…それを感じると、私自身がなんとも幸せな気持ちになります。

日々、患者さんに救われているというのが正直なところです。

ベッドサイドで

では、実際にはどのようなことをするのか、最近、アロママッサージをさせていただいた方のことをお話ししましょう。その方は50代男性の職人さんで、仕事中に転落し、脊髄損傷で下半身が動かせない状態でした。

初めて訪問したとき、表情は硬く険しいお顔でした。眉間にシワを寄せ、目を閉じています。それでも、挨拶をすると「じゃあ頼むわ」と声をかけてくださいました。直腸、膀胱障害もありウロバッグがベッド柵にかかっています。

私は、まずは感覚のあるデコルテ、緊張しているだろう肩や首、お顔もご本人がよいとおっしゃればさせてほしいと思いました。そこで「肩こりはないですか?」と聞いたところ、すごく「凝っている!」と訴えがありました。「肩や首のまわりに力が入っているようなのでほぐしてからお顔も少し触らせてください。顔はリラックスする神経が多いので力が抜けやすいと思いますよ」とお伝えしました。

香りを確認してもらったところ「ええにおいや」と、一瞬お顔の硬さが和らいで見えました。デコルテから肩、首の後ろなど手が入る範囲でマッサージをしていきます。お顔を触ると「あーこんなん(アロママッサージ)を女の人が好きなのわかるわあ」とおっしゃいました。

ずいぶんお顔の険しさはなくなっていましたが、終了後、急に「うっ」と苦しそうにお腹を押さえます。腹鳴があり、「お腹が動くときにこうなる。便秘がひどいんだ」と言われました。痛みを和らげ緩やかに動いてほしいと思ったため、ご本人に了解を得てお腹も触らせてもらうことになりました。ゆっくりと圧をかけずに密着させ円を描きます。「あー」と言いながら何度か息を吐き、少し落ち着いたようでした。そのとき「毎日、つらい」ぽつりとおっしゃいました。しばらくお話を聞き、私は今日の香りをプレゼントしようと、このとき使ったラベンダーとレモンの香りをコットンに垂らしてお渡ししました。

数週間ののち、その方から施術を受けたいとご希望があり伺うと、やはり硬く険しい表情でしたが、私の挨拶に「おう」と笑顔で迎え入れてくださいました。するとすぐに「右足がごっついしびれてたまらん。右足してほしい」とやや切羽詰まったような口調で訴えられました。両足には大腿部まである弾性ストッキングを着用しています。

左足は触っているのは少しわかるけど、右足はまったくわからないそうです。弾性ストッキングを脱がせると、少し冷えておられ足の裏は全体に硬くなっていました。しびれがあるため、ゆっくりと圧はソフトに密着を心掛けて触っていきました。足の裏はゆっくりともみほぐし、膝の裏も滞りを流すようにゆっくりとなでていきました。下腿、膝裏まで触ると、時々身体の中心方向にキューっと筋肉が硬くなるため、大丈夫ですかと声をかけて確認しますが「これは反射、大丈夫やから続けて」とおっしゃいます。

約10分のマッサージで徐々に下腿の静脈が浮いてきて、足の裏もほぐれてきました。眉間にあったシワがとれ、表情は少し和らぎ、口調もおだやかになりました。「ありがとう。また頼むと思うわ」

この日は鎮痛、循環をよくし、緊張を和らげる目的でラベンダー、オレンジ、フランキンセンスを選び、ホホバオイルに2%希釈で使いました。少しずつ気分をやわらげながら支えていきたいと思います。

精油の紹介 ~ラベンダー

■主な効能
ラベンダーは万能な精油と言われ、不眠によく、鎮痛、鎮静、抗炎症、抗痙攣などの作用があります。

■エピソード
古代ギリシャやローマ人はバスタブが紫色に染まるほどたくさんのラベンダーの花を浮かべて入浴し、清潔を保ち、傷を癒すのに役立てたと言われています。

■植物の特徴
ラベンダーの原産地は地中海沿岸地方で、現在では世界中で栽培されています。「ラベンダー」には種類があり、生育場所で性質が変わります。前述の患者さんに使ったラベンダーは真正ラベンダーです。

次回は香りが持つ効果についてお話ししたいと思います。

■参考文献
1)日本アロマセラピー学会:アロマセラピー標準テキスト臨床編、丸善、2010

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■著者プロフィール

NAOKO

NAOKO
短大卒業後、一般企業に就職し5年間事務職に従事する。1994年、専門職になりたいと大阪の看護専門学校に入学。1997年より大阪の総合病院にて内科病棟と外科病棟に勤務。2011年病院を退職。2011年ホリスティックケアプロフェッショナルスクールプロフェッショナルコース入学。2012年HPS認定アロマセラピスト取得。2013年より医療施設と連携したケアルーム「Lifetouch」にて勤務。HPS臨床アロマセラピストコースに進学し、猛勉強中

■監修

相原由花

相原 由花
ホリスティックケアプロフェッショナルスクール学院長、英国ITEC認定アロマセラピスト、英国リフレクソロジー協会認定リフレクソロジスト、関西医科大学心療内科学講座研究員、日本アロマセラピー学会評議員、日本ホリスティックナーシング研究会役員、eBIM(エビデンスに基づく統合医療研究会)評議員、NPO法人ウーマンリビングサポート副理事、The American Holistic Nursing Association会員、看護師、保健師

臨床アロマセラピーにご興味をお持ちになられた方は、お気軽に下記までお問い合わせください。

●ホリスティックケアプロフェッショナルスクール神戸本校
〒651-0085 神戸市中央区八幡通4-2-13 フラワーロード青山ビル5F
◎お電話でのお問い合わせ ⇒ 078-272-3093
◎ホームページで、詳しい情報をご紹介しています。
http://www.hcpro.jp/
◎Facebookページもあります。ぜひご覧ください。
https://www.facebook.com/holisticcareprofessionalschool

セミナー情報など

■HPS認定 プロアロマセラピスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#ca
アロマセラピストの基礎を、1年間徹底的に学びます。現役医師をはじめ、臨床経験豊富な講師から、基礎医学・精油学・アロママッサージをしっかり学習。シフト調整がしやすい「月2回」の受講です。

■HPS認定 臨床アロマセラピスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#cb
病いを抱えた患者さまの、症状緩和・QOL向上・安寧確保のためのアロマケアを学びます。病棟・施設でアロマを実践したい看護師の方におすすめです。

■HPS認定 リフレクソロジスト養成コース
http://hcpro.jp/course.html#cc
足裏から、患者さまの身体状況をアセスメントする技術です。反射区を刺激することで不調を改善しながら、心地よいリラクセーション効果もあり、脱衣がしづらい患者さまにも適用しやすいことも利点です。

■RJB認定 MテクニックRPractitioner 実践者育成コース
http://hcpro.jp/course.html#cd
どのような重篤な患者さまにも適用できる、特殊なタッチング技術です。精油を用いず、衣服の上からも行えるため、実施の場所を選びません。疼痛・不安・睡眠障害などをやわらげます。

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